顔面読書日記26
多分毎週水曜更新。


死者を起こせ

02.8.9

アーシュラ・K・ル・グインものは面白いけどテーマが重い。で、息抜きしなくちゃね。『死者を起こせ』は心明るくなるミステリ。フランスミステリって底に悪意が潜んでいて読後感が「んげげっ!」なのが多いんだけど、これは別もの。

ボロ屋敷に住み着いた4人の男が隣家に発生した謎を解く。この4人がでこぼこカルテット。この4人のキャラだけでご飯を4回おかわりできます。

1階に住むのは中世専門歴史学者。
2階に住むのは先史時代専門歴史学者。
3階に住むのは第一次大戦専門歴史学者。
屋根裏に住むのは元刑事。
この4人のおしゃべりが楽しいのよ。屋根裏付きの一戸建て。ボロでも良いから住んでみたい。もちろんわたしは屋根裏に住んで、他の3人にあれこれ指図するんである。うしし。


『死者を起こせ』 フレッド・ヴァルガス作 藤田真利子=訳
創元推理文庫・¥760

昔の竹宮恵子「カメリア館の三悪人」を思い出しつつ読んでました。なつかしー。

 


言の葉の樹

02.8.9

またしてもアーシュラ・K・ル・グインはすごい!
『闇の左手』に続くハイニッシュ・ユニバースのシリーズ。『言の葉の樹』も予想に違わず溜息もの。

女性大使サティがアカ星で、何を発見するかの話。アカ星はエクーメン(人類同盟組織)との接触後、古きを脱ぎ捨て新しいものへ転換を図ってる星なのだ。急激に事を起こせばどこかが歪む。一部明治時代の日本を思わせるなぁ。

今回は宗教について考えさせられるのだ。狂信についても。なんつったって、アメリカじゃダーウィンの進化論は教えちゃいけない地域があったりするからなー。読んでもいい本は聖書のみって人たちもいるらしい。うーむ。ゆくゆくはこんな事が起こるかも。


『言の葉の樹』 アーシュラ・K・ル・グイン作 小尾芙佐=訳
ハヤカワ文庫・¥700

他のハイニッシュ・ユニバースシリーズをなんとしても探し当てなくちゃ。


闇の左手

02.8.9

アーシュラ・K・ル・グインはすごい!
『闇の左手』を読み終えて、しばし呆然。

SFの面白さは世界の作り方で決まるのだ。架空の世界にリアルな説得力を持たせられるか。この点に尽きる!

地球人のゲンリー・アイはゲセン星へのたった一人の大使。ゲセン人は男女の別がないのだ。発情期にだけ性差が出現するのだけど、それすら男女どちらになるかアトランダム。2児の父で1児の母が一人の中で両立するのですよ。
地球人的考えはゲセン人に通用するのでありましょうか。ゲセン人の考え方をのみこめるものなのでありましょうか。

試しに友達を思い浮かべて、彼女(または彼女)が男でも女でもないと仮定してみよう。さてさておしゃべりを楽しむことができるだろうか。わたしは混乱して、べらべらしゃべり出してしまいそうだけど、相当居心地悪いと思う。


『闇の左手』 アーシュラ・K・ル・グイン作 小尾芙佐=訳
ハヤカワ文庫・¥680

異文化コミュニケーション、カルチャーショック。もっと重い言葉を捜してしまう。ゲセン星の厳しい風土も想像つかないよ。