顔面読書日記
毎週水曜日に更新予定(多分、できたら)


左手

02.7.11
歯医者さん通いは長く続きそう。今まで放置した報いなのだ。

『森の死神』には続編があった。『雪の死神』
急に暑くなったこの頃、思いっきり怖くて寒い物語は最適。
前作の主役エリーズは、少しだけ回復して左腕だけが動くようになっている。叔父のすすめで真冬のスキーリゾート地で静養することになったのだが‥‥

えー、ブリジット・オベールさん、これはやりすぎでしょう?
スプラッタホラーのミステリ仕立てと申しましょうか、何といいましょうか。最後の最後にあっと驚く結末を用意してくれるブリジット・オベール。
今回はあっあっあっあっあっあっあっ!!


『雪の死神』ブリジット・オベール作 香川由利子訳
ハヤカワ文庫 ¥840

エリーズの辛辣な減らず口が唯一の息抜き。
さあ、あなたもあっあっあっあっあっあっあっ!!しましょう。



手に汗
手に汗にぎる歯医者さん
痛かったら手で合図してねと言われましても ‥‥

02.6.26
今週から始まった歯医者さん通い。苦手だ。歯医者さんは苦手だ。
なんて言ってはいられないのだ。先々週に草加煎餅の分厚く固いのをかじって、煎餅ばかりでなく自前の歯まで噛み砕いてしまったのである。

歯医者さんの恐怖から逃れるべく、ここは夢中になれるミステリ投入なのだ。
ブリジット・オベールの『森の死神』怖い、怖い。歯医者さんより怖い展開。

主人公のエリーズはテロの巻き添えになり、全身麻痺、視力を失い、口もきけない。動くのは唯一左手の人差し指のみ。残された聴力だけで殺人事件を推理していくのだけど、自分の考えを表す手段がない。その上、彼女にも危険がせまって‥‥

物語がエリーズの視点で展開してゆくので、怖さも最上級。イライラ感も最高潮。
歯医者さんの待合室でも熱中できるミステリベスト10に必ず入る作品です。


『森の死神』ブリジット・オベール作 香川由利子訳
ハヤカワ文庫 ¥720

ブリジット・オベールは『マーチ博士の4人の息子』でも震え上がらせてくれました。あのラストは衝撃だったなあ。そっちも歯医者さんの待合室でも熱中できるベスト10に是非入れたい。


ビリーの写真
ビリーは何者だったのか。
何を伝えたかったのか。

02.6.19
久々にメモを取りながらミステリーを読んだ。人物関係を整理しながら読まないとカタカナ名に弱い私はすぐ迷子になるのだ。

ミネット・ウォルターズの『囁く谺』はメモを取る価値あり!

ロンドンのある家のガレージで、ホームレスの通称ビリーが餓死した。ガレージの冷蔵庫には食べ物が詰まっていたというのに、何故ビリーは餓死したのか。ビリーは何者だったのか。なぜこの家のガレージに入りこんだのか。タイトルの『囁く谺』のとおり、この謎がこだまとなって新たな謎を掘り起こしていくのだ。

謎解きの一方、イギリスのホームレスの生活、壊れかけた家庭の有様が描かれる。
5年前ならよその国の遠いお話気分で読めたろうけど、今の日本ならこんなことがあっても不思議じゃない。
親子関係がうまくいかずに崩れていく家庭は日本でも当たり前になってきてるしね。(これは昔からか‥‥)
14才のホームレス、そろそろ日本でも出現しそうだ。(プチ家出とかじゃなくね。)


『囁く谺』ミネット・ウォルターズ作 成川裕子訳
創元推理文庫 ¥1100

どれを読んでもはずれなしのミネット・ウォルターズ。今回もどんぴしゃ。暗い話なのだけどテリーの独立心に救われます。