顔面読書日記
毎週水曜日に更新予定(多分、できたら)


李老師、十牛
ペテン師なのか
賢者なのか
玉に瑕は伊達じゃない。

02.5.8
昔ムカーシ、柳斉志異が大好きだった。
年を経た亀が夜這いにきたり、お金持ちに幽霊が取り憑いたり、中国のちまたに流れたウワサや伝承の類がびっしり詰まっている。

今週であった『鳥姫伝』は柳斉志異に通じるものがあって、バンザイもの。
時代は唐、村の子ども達が突然謎の病に倒れる。子ども達を救うため、村の若者十牛は賢者を求めて都に走った。玉にきずの天才、李老師と力持ち十牛が大活躍。アメリカ発の十二国記コメディ版とでも言ったら良いんでしょうか。
へんてこ話と妖怪とじーさんが好きな人は読むべきなんである。


『鳥姫伝』バリー・ヒューガード作 和爾桃子訳
ハヤカワ文庫 ¥740

またまたやってくれましたハヤカワ。
この表紙も例に漏れず少女マンガだ‥‥
雪舟展で中国の絵画にふれたワタクシとしてはこの表紙には異議ありなのだ。作品の軽やかさ、剽軽さを出してよね。



ナナカマドは
ラッキーアイテム

02.5.1
自宅のベランダから見渡す景色は、雑居ビル。マンション群。間を埋め尽くす小さな家々。こんな風景ではファンタジーはうまれないのかしら。ファンタジーと言えば緑の濃い森と草原がつきものだもんね。

見つけました。ありました。都会が舞台のファンタジー。
『ジャッキー、巨人を退治する!』
カナダはオタワの街の中。失恋の痛みを酒で埋めてたジャッキーはとんでものないものを目にしてしまった。その上とんでもないものまで拾ってしまった。
19才のOLが大活躍! というより大活躍しなくてはいけない立場に追い込まれてしまうのだ。

恐らくどんくさいと思われるジャッキーは危機に見舞われると心の中で
「ゴージャッキーゴージャッキーゴー‥‥」
やってのけるのよ勇気を出して。の時もあれば、逃げ出すのよ勇気を出しての時もあり。ここがうれしい。
「ゴージャッキーゴージャッキーゴーー‥‥」
これも魔法の呪文かな?


『ジャッキー、巨人を退治する』チャールズ・デ・リント作 森下弓子訳
創元推理文庫 ¥680

これを読んだら、見慣れた風景も生き生き見えてくることうけあい。


双子の少女
仕事を持つこと。
自分のクローンを持つこと。
夏っ子の夢。

02.4.26
SFは全部ふにゃお院長に回してしまえ、と思ってたのだけど今週読み終えたものがSFだったのよねー。

『グローリーシーズン』双子の少女が成長する物語。
要約してしまえばそういう話なんだけど、この双子の存在する世界が思いっきりぶっとんでいて、下巻に入る頃になってから、ああこういう世界だったのねと得心がいきました。理解が遅い?

この星での一族ってのは、血縁姻戚のことではありません。それぞれの元となる女性のクローン集団。貿易を専門に行う一族。職人技が冴える一族。武芸に優れた一族。顔も体型もそっくりなら引き継ぐ職業も同じ。繰り返し強調すると全て女性。
クローン以外は不遇な世界であります。

主人公の双子は通常の妊娠出産で生まれた夏っ子。この星でのヒエラルキーにおける最下層です。自立イコールサバイバル。
男性も通常の妊娠出産で生まれるのだけど、ある時期以外は忌むものとして扱われるのです。(ここがポイントなんだな)

分厚い文庫2冊読み終わったところなのに、完結した話って感じがしないんだよねー。まだ物語は始まったばかり、さてさてこれから双子の運命やいかに。口上が聞こえそう。



『グローリーシーズン』ディヴィッド・ブリン作 友枝康子訳
ハヤカワ文庫 上・下巻共に¥880

お風呂の友に持ち込んだら、なんと3時間も‥‥ 
お風呂に持ち込むのは短編が良いようです。


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