顔面読書日記15
毎週水曜日に更新(の予定)


狩衣
狩衣、着てみたし
01.10.23
番外編です。
友達と映画「陰陽師」を見てきたのだ。えらく期待して見に行ったのだ。陰陽師の原作を読んで以来、晴明役は野村萬斎様しかないと思っていたので、興奮して見に行ったのだ。(加えて京極堂もこの人しかいないと思ってる。)

蜜虫が出た途端、笑っちゃいました。すまん。
祐姫が鬼に変わるところ、下向いて笑っちゃいました。ごめん。
とさかのりっぱな烏型式神、動く度にヒヒッとなりました。許して。

だってさ、なんだか超豪華な仮面ライダー見てるみたいなんだよ。ああ言ってしまった・・・

それなのに野村萬斎と真田広之がシリアスで、しかも格好良いいんだな、これが。この二人は別世界です。なんてちぐはぐな映画だ!
こんな具合に有元にとっては非常に苦しい映画だったのだが、一緒に行った友達は、野村萬斎しか目に入らなかったとみえ、
「万斎様、万斎様。」
と手放しの喜びよう。こやつはわたしが「ジョー・ブラックをよろしく」を見て
「ブラピ様しか目に入らなかったよー!」
と言ったら鼻でせせら笑った奴なのですぞ。
しかし野村萬斎がはまり役だったのは本当。輝いてました。衣の動きまで美しい。

つけたし。
映画の帰り、「陰陽師」を見た後にやってはいけないことがあるのを知りました。それは自分の姿を鏡で見ることです。帽子を買おうと思って全身鏡の前に立ってしまったのよ。萬斎様の狩衣姿が目に焼き付いた状態で己を見ると、ボロクズ同然。これから「陰陽師」を見にゆく方、見終わったら3日は鏡を見るのをよしましょうね。


スターガール

01.10.17
この頃、小学校6年生の娘が友達から本を借りてくるので、すごくお得なのである。好みの本が回ってくるのでありがたいのである。

わたしが小学校時分は、赤い表紙の「少年少女世界の文学」を読み終えてしまうと、もう少年少女向けは、怪盗ルパンや明智小五郎シリーズくらいしか残っていなかった。
子どもの頃の活字渇望症が影響してか、書店で児童文学やティーンズ向けの新刊が平積みになってるのを見るとワクワクしちゃう。

先日娘が借りてきたのが「スター☆ガール」
アメリカの片田舎のハイスクールが舞台。そこに編入してきた女の子が波乱を起こす。だって彼女はとーっても変わってるから。アメリカの高校も日本の高校も状況は大差ないよ。
周りから浮かないように苦労してる。
目立ち方にもルールがある。人気者は憧れの的だけど変わり者の烙印を押されたら、学校生活は悲惨・・・。

アメリカ大好き教育評論家が言うじゃない。
「アメリカの子ども達は、幼い頃から個性を育てる教育を受けているから、自分の意見をはっきり持ち、発言も積極的だ。相手の個性を尊重する態度が身に付く。」
ほんとなのかぁ?といつも思っていた。
「スター☆ガール」を読む限り、必ずしもそうではないぞ。
第一、この人達が言う「個性」ってものもよくわからない。有元周辺では「わがまま」の別名として使われることが多いから、よけいに混乱するのよ。

一体、「個性」って何なんだろうね?

スター☆ガール
ジェリー・スピネッリ作 千葉茂樹訳
理論社¥1380

いつも心に「スター☆ガール」よ!
わたしが中学生の頃、これが読めたら良かったのに。


3枚おろし

01.10.6

2年ぶりに読み返したぞ。
「死の病原体・プリオン」
タイトルからおわかりのように、狂牛病を追ったノンフィクションです。

初めて読んだとき、心底震え上がって友達に電話しまくった。
「いい、狂牛病はイギリスだけじゃないかんね。日本だってとっくに上陸してるかも。うんにゃしてると思って間違いなし。わたしはこれからスープの素とかゼラチンとかスナックとかインスタント食品とか、とにかく食べないわよ。」
半年したら疲れてなんでも食べるようになったけどね。

2年前、日本ではホラーブームが席巻してたけど、
「黒い家」も「貞子」もプリオンの前には木っ端微塵。
正真正銘の現代ホラーは「プリオン」であると当時は思ってました。

で、ここ連日報道される狂牛病情報を見て何を思うか。
一番のホラーは「怠慢」だよ。
何の備えも無かったのですね。日本のプロフェッショナルの面々には。

過去のイギリス狂牛病のニュース見ながら
「狂牛病だってさ。何か対策を立てないといけないのか。」
「大丈夫だって、イギリスの話だろ。日本じゃあり得ないって(根拠なし)」
「そっかあ、日本じゃないよな。(だから根拠がないだろ)」
「どーせ死人が出るのはずっと先の話だろ、俺達退職してるって。」

なんて会話がされてたのかと思うと、むかむかしてくるのである。
考えすぎだろうか?
この世で一番恐いものは人間であるという定説はここでもまた補強されたのだった。

その昔、友達とばか話してた。
「知り合いがさあ、お役所って言おうとしてオヤクソって言ったのよ。」
「がはは、親玉のクソってすごくない?」
「こっちのほうが正式名称かもよ。げへへへ。」
ホントになるなよ。

死の病原体・プリオン
リチャード・ローズ著、桃井健司・網屋慎哉訳。
草思社、¥1900

こんなに面白く読めるサイエンス・ノンフィクションはめったにないですぞ。
共に震え上がろう。
その後、研究が進んできてるから対処の仕方はあるって希望が出てきました。
人間のやり方次第、発生も撲滅も。