図書館の勝負
『ウイルスの反乱』

図書館で借りてきた本に書き込みを発見して、激怒するのは私に限ったことではないでしょう。まったくの他人の存在が目の端に割り込んでくる。先日借りたこの本にも書き込みが。しかも今までで一番すごかった。


「なんてこと!」叫んでしまいました。大声で。
だって最初のページから、傍線で埋まっていたのです。鉛筆書きの傍線がページの大半を埋めつくしている。もうほとんど縞柄しかも、ところどころ赤鉛筆で「ここが重要」とか「大切」と入っている。ページをめくるたび新たな縞柄が。こっちは腹が立って内容もなかなか頭に入らない。

コノヤローと呟きつつ読み進むと、18ページ目で目が?に。ここにきて突然書き込みがない!ここから先にはまったく何もない!ちょうどウイルスの酵素転写に話がいったところですよ。
ふっふっふ。書き込みした奴はたった18ページで挫折しとるではないですか。俄然はりきりました。書き込みのせいで読むのやめようかな(ややこしくて難解だったせいもあるけど)と思った私ですが、このにっくき書き込み野郎に勝ってやる!もう教養のためではなく、勝負のための読書に転換。根性で読了しました。負けたくなかったからねぇ。

 冷静に考えると、図書館の本に書き込みしてしまう人物というのは、あんまり頭が良くないと思うのですよ。まず公共の物を私物とごっちゃにしてること。書き込みをしないと頭に入らないと考えてること。特に今回の犯人は、ほぼ全ての文章に傍線引いてる。どれが重要かわからないために片っ端から引いてたわけですね。かわいそうに。わたしの高校時代の世界史の教科書とそっくり。


『ウイルスの反乱』
ロビン・マランツ・ヘニッグ 長野敬 訳
青土社  2200円
1993年当時のウイルスを取り巻く状況。ウイルスの交通と言う考え方はおもしろい。ウイルスの研究が細分化されすぎて、相互の交流がないこと。研究が遺伝子レベルで語られる事が多くなり、公衆衛生に役立てるにはどうしたらいいかという総体的なものの見方をする観点が欠けている事。筆者はこれらの傾向を憂慮している。わたしもコワイよ。
この世界もボーダーレスに動き回る研究者が増えて欲しいと、願ってしまった。